“それでは最後に、売人A氏を例に、「知られざる密売人の生活」の一端を紹介したい。 場所は関東某所。1日のスケジュールはざっとこんな感じだった。 14時過ぎ、量販店で購入したという、地味なグレーのスーツ姿で自宅を出る。約3000万円だったという建売の一戸建ては、「現金」で購入した。もちろんシャブで稼いだカネだ。 「末端の売人は、派手なジャージなど、いかにもチンピラ風の格好で商売するからすぐに職質(職務質問)を食らったりする。とにかく目立たないことが重要だ」 page: 7 移動は常に車。自分名義のものではない。約20分ほど走った場所に借りてある1DKのアパートへ向かう。ここで行われるのは「小分け」だ。 手術用ビニール手袋をはめ、先端が斜めにカットされた短いストローをスプーン代わりに、10グラムはあろうと思われる大きなパケの中から、小さなパケへと移していく。だいたいの分量を目で確かめてから、電子スケールの上に置く。 「一番小さなパケには、モノを0.2グラムから0.25グラム入れ、これを0.3グラムと言い切って、1万円で売る。1グラム入りのパケは、正味量0.85グラム前後で、2万3000円くらい。10グラムなら相手次第で値段を決める。だいたい10万円前後だよ。これでもうちは他よりは安く出してるから、ガタガタ言われることもない」 50個ほどのパケを小分けすると、マグネットがついたプラスチックケースにそれをしまいこみ、数十本の注射器の入ったスーパーのビニール袋を持つ。客からの注文を受けるのは、身元がばれないように工夫した携帯電話2台。再び車に乗り込むと、時間は16時を回っていた。 夕方17時過ぎ、携帯がちらほらと鳴りだす。客からの注文だ。 「太い取引先から注文が入れば、キロで仕入れることもある。ネタは増えてるよ。ただ、末端価格はここ数年あまり変わってないんじゃないの。それに売人として賭けるような若い奴は少なくなった。1万円だ、2万円だって細々とあちこち車で走り回るより、まだ“もしもし”(振り込め詐欺)やったほうがいくらでも稼げるんだから。そういう賢い連中から見たら、シャブの小売りの稼ぎなんて微々たるもんだからね」 それでもこの夜、A氏の売り上げは、約35万円に上った。”
— 覚醒剤の売人独白「月の売り上げは600万円」ボロ儲けのカラクリ | 地下経済の深淵 | ダイヤモンド・オンライン